大判例

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宇都宮簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は石川清と共謀の上

第一  昭和五九年七月九日午前零時三〇分ころ、栃木県芳賀郡益子町大字七井三、三九〇番地の四富士益子開発株式会社太平洋クラブ益子コース内の池において、同会社代表取締役高橋輝雄管理にかかるゴルフボール八一二個(時価合計約二万円相当)を窃取し

第二  同月一九日午後一一時ころ、同県那須郡烏山町大字大桶二、四〇一番地株式会社、烏山城カントリークラブゴルフ場コース内の池において、同会社代表取締役田村三作管理にかかるゴルフボール約四〇個(時価合計約四、〇〇〇円相当)を窃取し

第三  同月二一日午前一時ころ、同県塩谷郡喜連川町大字早乙女二〇六八番地株式会社紫塚スポーツシテイ(代表取締役芳賀満男)紫塚ゴルフ倶楽部ゴルフ場コース内の池において、同ゴルフ倶楽部支配人秋山正一管理にかかるゴルフボール約四三二個(時価合計約四万三、二〇〇円相当)を窃取し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも刑法六〇条、二三五条に該当するが、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、(一)本件各ゴルフ場のコース内の池にゴルフアーが打ち込み回収を放棄したボール(以下ロストボールという)は無主物であり、現実に池から拾い上げたときに拾い上げた者の所有に属するものであつてゴルフ場の所有ではない。(二)仮にゴルフ場が無主物先占により所有権を取得したとしても刑法によつて保護されるべき財物とはいえない。(三)被告人にはゴルフ場の所有に属するものであるとの認識を欠いている。(四)本件はその違法性の程度が可罰的な程度に至らないとして可罰的違法性がない旨主張するが、(一)ロストボールは慣行に照らしゴルフアーが所有権留保の意思表示をする特段の事情がある場合を除いて、その回収を断念し所有権を放棄したものとみなして、ゴルフ場経営者が無主物先占して即時所有権を取得し、その管理支配下にはいり、施設管理物の一部に含まれると解されるところ、関係各証拠によれば、本件各ゴルフ場は、杭などによる境界標や立入禁止の表札板等により周囲の土地とは明確に区劃され、夜間休日には守衛、警備員が施設の警備などに当たつており、ロストボールが各ゴルフ場の排他的支配管理下に属し、その所有権についても無主物先占が成立すると解して妨げないし、(二)各ゴルフ場において、ロストボールは定期的に回収し、再使用するなどして適宜利用処分している実情からすれば、客観的な経済価値を有し、その主観的使用価値が認められる以上、刑法上の保護に値する財物であり、(三)本件各犯行が、共犯者石川清と予め回収用具などを準備し、計画的に特定のゴルフ場をねらい、深夜を待つて敢行し、その発覚を虞れて賍品等を隠匿するなどの情況からすれば、被告人に「他人性」についての認識を有していたことが認められ、(四)本件各犯行がその行為の態様、被害の程度等から、到底社会通念上容認される相当の事案とは認められず、可罰的違法性を欠くものとはいえないから弁護人の主張はいずれもこれを採用しない。

よつて、主文のとおり判決する。

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